EC市場の今後の動向

EC市場は今後も拡大していると見られていますが、手放しで自社が運営するEC事業が同じように伸びていくかというと、必ずしもそうとは限りません。
EC市場を取り巻く環境の変化に素早く対応していく必要があります。

実店舗の役割の変化
EC化率が高まるにつれ、実店舗のショールーミング化が進んでいます。店頭で商品を確認し、後日ECで購入するという動きです。ECで購入した商品を店頭で受けるBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)の導入も進んでおり、商品を購入する以外の機能が実店舗に求められはじめています。

後述するD2Cブランドでは、オンライン専業で事業が始まり、実店舗で顧客とのコミュニケーションやブランディングを促進するなどの動きも見られ、リアルならではのリッチな体験を提供する場所という位置づけに変わりつつあります。

DtoC市場の拡大
D2CとはDirect to Consumerの略で、卸売や小売店を介さず直接消費者に商品を販売するモデルの事業です。無料から始められるECサイト構築サービスの普及したこと、広告ではなくSNSでの情報発信が大きな影響力を持っていることから、D2Cとしての新規参入が容易になっていることがD2Cの増えている背景の一つです。

中間流通を挟む既存の販売チャネルを持つ大手メーカーでも、自社ECで直接消費者との関係を構築するD2Cへの参入も進んでいます。これはD2Cには、ブランドの世界観を直接訴求できるというメリットがあるためです。

サブスクリプションサービスの拡大
サブスクリプションサービスとは、定額利用料金を受け取り、サービスを提供するビジネスモデルのことです。動画や音楽などのデジタルコンテンツのサービスだけでなく、食品の定期配送などのサブスクリプションサービスも拡大しています。

これは初期費用がかからない、定額だからお得といった経済的なメリットももちろん影響しているのですが、所有しなくていいため「モノよりもコト」にシフトしている消費者の嗜好にもマッチしているためと言われています。

一方、解約方法がわからない、意図しない契約となってしまっているなどのトラブルも起きやすいと言われており、わかりやすく誠実にサービスを提供することが求められています。

物流の状況
物販分野の BtoC-EC 市場規模の拡大に伴い、宅配便個数も増加しています。国土交通省が毎年発表している我が国における宅配便取扱個数の推移では、令和2年度(2020 年度)は 48 億 3,600 万個となっており、平成 21 年度(2009 年度)の 31 億 3,700万個と比較して、約54%の伸長率となっています。

最近では置き配の普及や、新型コロナウイルス感染拡大の影響で消費者の在宅率が上がったことから再配達の件数は減っているそうですが、未だドライバー不足は深刻な課題です。近年では燃料費も高騰しており、適正な送料の設定や効率化を検討する必要があります。

物流ロボット
こうした物流を取り巻く課題解決に期待されているのがロボットの活用です。
倉庫内でのピッキングやパッキングなどを行うロボットの普及は年々進んでおり、ドローンや自動運転を活用したラストワンマイルの配達のロボット化も実験や検討が進んでいます。

セキュリティ対策
個人情報保護に関する消費者の不安は大きく、総務省「令和二年通信利用動向調査」によると、近年も情報漏洩に対しての不安感が強まっているそうです。

適切に個人情報を管理・保護し、漏えい等が起きないようにすることはもちろん、「安心して利用することができるECサイトである」と消費者に正しく伝えられるかという視点も求められます。

SNS利用のさらなる広がり
総務省「令和二年通信利用動向調査」によると、2020 年における SNS 利用率は 73.8%で、2019 年と比較すると 4.8%増加しています。これは新型コロナウイルス感染症拡大下において自宅で過ごす時間が長くなったことが理由のひとつと考えられています。世代別利用率を見ると、20 代は 2020 年には 9 割を超えており、ほぼ全員が利用していると言っていいでしょう。また若年層に加え、60 代より上の年代の利用率も着実に上昇しています。

SNSでの消費者の投稿は口コミの情報として、購買の意思決定に大きな影響を与えます。事業者としては、SNSを活用した自社からの情報発信に加え、SNSでどう自社のブランドを拡散してもらうかというSNS戦略を検討する必要があります。

AIの活用
ECの分野においてもAIの活用が進んでいます。

需要予測やレコメンデーションなどの表示コンテンツの最適化、チャットボットによる接客や在庫の最適化など多くの業務領域に置いてAIが活用されています。


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